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災者と知見を持つ専門家との橋渡し役の存在意義
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災害時には、一般常識、行政サービス、建築、医療など、ある程度の一定の知見を有しつつ、多様な利害関係者の立場を理解しつつ柔軟な対応が可能な、調整係、コーディネーターの存在が重要となってきます。被災者には、地域にいるすべての人が対象者となりうるわけなので、年齢では赤ちゃんから高齢者、性別では男性や女性、LGBT、国籍では日本人や外国人、職業においても、事業者や会社員、学生・主婦、健康状態においても健常者、入院患者、障害者など、多様な立場の人たちが存在するものです。

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したがって当然、被災者のニーズは多様なものとなります。そこから、被災者間、あるいは非被災者を含む住民間、更には行政との間で利害が相反する事態が生じることになるのです。そこで、農林、商工、水産、観光、福祉、環境、建築、法律などそれぞれの専門性を有する人材が効果的に連携することの重要性が高くなるわけです。


 熊本地震が発生した後、直近のゴールデンウィークに、私は熊本県に行きました。その時、避難所で自治体職員が中心となって被災者に罹災証明書が発行されるかたわらで、私たちは書面発行後、被災者の話の聞き役として、被災者の話を聞く役をやっておりました。その際、建築士、弁護士、税理士、司法書士など、多様な士業の先生方がいらっしゃいました。熊本県の方がほとんどですが、福岡から、兵庫、東京からと、来ている地域もさまざまで、今振り返ってみても錚々たるメンツが集まっていたのだと感心するくらいの面々でした。しかしながら、その後どうなっているかというと、被災者と継続的に会って、伴奏型の支援を継続することもなく、またそれぞれが忙しいこともあり、集まって情報共有することも難しく、一時的な相談対応をしたのみに終わっております。


 その後、被災者と継続的に寄り添うことができ、その時々に変化していく被災者ニーズを適切にとらえ、必要となりそうな専門家につなぐ、あるいは専門家と会うことができる機会を設けるといったことが可能な人材が必要不可欠です。しかしながら、そういう人材を確保するということが非常に困難であるため、被災者とその支援が可能となる専門家との間の溝を埋めることができない状態のまま、時間だけが過ぎていくということになってしまっております。


 基礎自治体等の行政機関も、平時にはない例外的事象に対するイレギュラー対応の連続によって、なかなか機能する状態には至りません。また、人的リソース不足もあり、事務手続き等、行政サービスとして遂行しなければならないことが、遅々として進まなくなることになりがちです。生真面目な職員であればあるほど、何とかしなければという責任感が強いため無理をしてしまうこととなり、その結果、体調を崩すということにもなりかねません。また、自らが被災していない職員などは、地震の被災体験そのものが無いため、被災するということが本質的に理解できないケースが多くなります。そのため、被災者がどのような状況で困っているのか、その場合、どのようなことをしてあげることが被災者の問題解決につながるのかという発想にはなかなか至ることが難しくなります。


 このような状況では、行政側と被災者が何らかの手続き等でやり取りをする必要が出てくる際、どうしても行政側と被災者側で対立軸が構成されてしまい、官と民が連携して地域の再建に向けて一丸となって頑張ろうという風にはなりにくいものです。そういう意味からも、行政と被災者のそれぞれの立場を理解し、相互のやり取りを調整するといったコーディネーターの存在が、非常に重要なものとなってくるわけです。このような調整役の確保に向けては、行政や民間で、平時から自然災害を想定したうえで、「この人ならば」という人物とのかかわりを有しておく必要があるのだと強く思います。